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丸山眞男、戦争経験、伝統、近代、近代化の構造、フィクション(虚構)、政治的リアリズム、悪さ加減の選択、普遍主義の解釈、国民的な誇り、戦後民主主義
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授業の目標
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丸山眞男(1914-1996年)は、20世紀日本の政治学者・政治思想史家として国際的にも高く評価されている。しかし、彼が執筆した学術論文は密度が濃く難解で、関連の専門知識なしに精確に読解し有意義な批評を行うことは不可能である。この授業では、学術論文ではなく、1940年代後半から1960年代前半までに丸山がおこなった一般市民向けの講演記録を主たるテクストにして、学問の基本的な技法を学んでみたい。その技法とは、テクストから情報としての思想を得るのではなく、どうしてそのような問いを立てたのか、なぜその角度から分析したのかといった、問題設定と思考方法に注目することである。今年度の演習では、『丸山眞男集』全16巻・別巻(1995-1997年)と『丸山眞男集別集』全5巻(2014年より刊行中)に収録された講演録と関連著作から、(1)平易な概念モデルを用いた「文明批評」論、(2)試論的な「比較近代化論」、(3)原理論的な「政治の認識論」、そして(4)論争をよぶ具体的政策に即した議論を素材に選んだ。1940年代後半から1960年代に至る丸山自身の関心変化に配慮すると同時に、講演当時から半世紀以上を経た、現代日本の政治文化の分析につながる論点を引き出してみたい。
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到達目標
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(1)20世紀日本の政治学者・思想史家の講演記録や著作の講読をとおして、思想史研究についての理解を深める。 (2)テクスト講読によって、思想内容を情報として獲得するのではなく、問題設定や思考方法を学ぶ。 (3)テクスト読解の「技法」、論文執筆の「方法」、批評の「作法」を実践的に習得する。
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授業計画
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授業では、学問の基本的な方法を学びつつ、丸山眞男による講演記録とその関連文献を講読する。新書や文庫に再録されこれまで読み継がれてきた「古典」的な作品ばかりでなく、2014年より刊行が始まった『丸山眞男集別集』に新たに収録された記録も取り上げる予定である。文献講読の回は、報告者によるテクストの内容要約・整理と論点提示を受け、その後質疑応答と討論を重ねる演習形式で進める。講演は即興的要素を伴うが、それを含めてひとつの完成されたテクストとして扱う。テクストの構造分析(全体的構成の分析)を読解の基本にして、その上で、テクストと同時代の社会的・思想的背景との関係、さらにテクストが現代の読者にいかなる創造的な意味をもちうるのかを探ってみたい。現時点で予定している各回の内容は、以下のとおりである。
【丸山眞男の思想的出発点を知る】 第01回 イントロダクション: 丸山眞男の人と思想 第02回 戦後思想の出発点: 戦争経験の概念化 「超国家主義の論理と心理」(1946年)・「軍国支配者の精神形態」(1949年)
【テクスト読解の「技法」・論文執筆の「方法」・批評の「作法」を学ぶ】 第03回 テクストの読み方・書評レポートを書くために・文献検索「図書館情報入門」(文献検索は自習)
【テクスト読解と批評の実践(1) 「文明批評」論】 第04回 「「である」ことと「する」こと」(1958年10月、岩波文化講演会) 第05回 「「である」ことと「する」こと」をめぐる全体討議 第06回 「思想のあり方について」(1957年6月、岩波文庫創刊三○年岩波新書創刊二〇年記念講演会) 第07回 「内と外」(1960年11月、岩波文化講演会)
【テクスト読解と批評の実践(2) 「比較近代化」論の試み】 第08回 「ヨーロッパと日本」(近代意識と現代意識)(1949年6・8月、協同組合主催講演会・信濃木崎夏季大学) 第09回 「近代化と西欧化」(1960年10月、東京大学公開講座)
【テクスト読解と批評の実践(3) 「政治の認識論」】 第10回 政治的無関心(1948年夏・1953年6月・1954年):「政治嫌悪・無関心と独裁政治」(1948年夏、教員再教育講習会)、「批評のしかた」・「政治からの逃避」(1953年6月、ラジオ日本文化放送) 第11回 「現代における人間と政治」(1960年) 第12回 「政治的判断」(1958年5月、信濃教育会上高井教育会総会) 第13回 「政治の認識論」をめぐる全体討議
【テクスト読解と批評の実践(4) 具体的政策に即した議論】 第14回 「憲法九条をめぐる若干の考察」(1965年)・「「第九条改定に対するわれわれの態度」をまとめるについての資料」・「憲法第九条をめぐる原理的諸問題」(1964年) 第15回 憲法九条論をめぐる全体討議と総括討論 参考:「現代における態度決定」(1960年5月、憲法問題研究会 第二回憲法記念講演会)・「戦後民主主義の「原点」」(1989年7月、インタビュー)
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準備学習(予習・復習)等の内容と分量
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(1)授業では、受講生全員が課題文献を読んでくることが前提になっている。 (2)毎回の課題文献へのコメント作成。報告担当者は、担当箇所についてのレジュメ作成と口頭報告の準備。 (3)学期末に提出するレポート作成のため、講読した任意のテクストについて、独自のテーマを決め、自分なりに考察を深める。最終的には、それを論理的に表現する。
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成績評価の基準と方法
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(1)授業への積極的参与(出席・討議への参加)(20%) (2)毎回の課題文献へのコメント(担当者は担当箇所についての報告)の内容(40%) (3)学期末提出のレポート(40%)
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有する実務経験と授業への活用
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他学部履修の条件
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テキスト・教科書
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担当教員が配布するテクストを使用する。 Materials will be provided by the instructor.
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講義指定図書
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丸山眞男集 第1~16巻・別巻(新訂増補) / 丸山眞男 : 岩波書店, 2015, ISBN:9784000919685 丸山眞男集別集 第1~3巻 / 丸山眞男 : 岩波書店, 2014, ISBN:9784000928014 定本丸山眞男回顧談 上・下 / 松沢弘陽, 植手通有, 平石直昭編 : 岩波現代文庫, 2016, ISBN:9784006003517 丸山眞男セレクション / 杉田敦編 : 平凡社ライブラリー, 2010, ISBN:9784582767001 超国家主義の論理と心理 他八篇 / 古矢旬編 : 岩波文庫, 2015, ISBN:9784003810439 政治の世界 他十篇 / 松本礼二編 : 岩波文庫, 2014, ISBN:9784003810422 丸山眞男座談セレクション 上・下 / 平石直昭編 / 岩波現代文庫 / 2014 / ISBN:9784006032746
一哲学徒の苦難の道:丸山眞男対話篇1 / 古在由重・丸山眞男 / 岩波現代文庫 / 2002 / ISBN:9784006030544
現代日本の革新思想:丸山眞男対話篇2・3 上・下 / 梅本克己・佐藤昇・丸山眞男 / 岩波現代文庫 / 2002 / ISBN:9784006030568
日本の思想 / 丸山眞男 / 岩波新書 / 2014 / ISBN:9784004120391
丸山眞男 : リベラリストの肖像 / 苅部直 / 岩波新書 / 2006 / ISBN:9784004310121
戦後民主主義:現代日本を創った思想と文化 / 山本昭宏 / 中公新書 / 2021 / ISBN:9784121026279
丸山真男と戦後民主主義 / 清水靖久 / 北海道大学出版会 / 2019 / ISBN:9784832968622
福澤諭吉と丸山眞男:近現代日本の思想的原点 / 平石直昭 / 北海道大学出版会 / 2021 / ISBN:9784832968769
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参照ホームページ
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研究室のホームページ
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備考
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更新日時
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授業実施方式
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