キーワード
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国家、国境、境界、地域、民族、エトノス、エスノセントリズム、倭寇、偽使、パスポート、ID、境界人、中華意識、唐物、問題発見、テーマ、論点、複眼的思考、テキストクリティーク、史料批判
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授業の目標
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学問・研究の醍醐味や面白さは、論者の着眼点や問題設定のありように依存する。問題発見能力の涵養が重要なゆえんである。本授業では、その際、歴史学・人文科学に参加していく上で必須となる、問題発見のための「技」や「型」、「構え」を意識して講義を進めていく。歴史研究をめぐるワクワク感を、大学初年次の皆さんと共有していきたい。題材は、講師橋本が長く研究してきた室町期日本と東アジアとの国際交流史に求める。のみならず、文献史料の批判的な読み方や、学術的文章の読み書きの基礎や基本を伝えることができれば本望である。
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到達目標
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第1に、歴史学・人文科学の研究がいかなる研究視覚によって進められてきたのかを理解し、自分でもそれを実践できるようになること。 第2に、先行研究における問題設定のありようを理解し、自分の言葉で評価し、また語れるようになること。 第3に、自分なりのオリジナルな論点を打ち出すために、自分自身の根本思想を詐らぬ、強い好奇心を持ち続けること。
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授業計画
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上述の通り、当該目標である「歴史学事始め」を語るための具体的話題は、14〜16世紀(室町時代)の日本と東アジア(中国・朝鮮・琉球など)との国際関係や文化交流史に求める。ただ単に先行研究が明らかにしてきた学問的成果を紹介するのではなく、研究者がどのような思考の型や技、姿勢を用いて考究し、その結論を導くに至ったのかを明示することに重点をおくつもりである(したがって受講者もその点を毎回意識してほしい)。 各単元(2〜3回分)の授業内容は、半分が講師の講義、残り半分が受講生の作業、という構成になるであろう(状況がゆるせば、グループワークや討論会等も行なう)。後者の実質的作業は予習・復習として、宿題のかたちで課す予定である(論文講読、文献蒐集、ミニレポートなど)。 なお、本授業は、おおよそ下記の項目立てで進めていくつもりであるが、内容・順番等、急遽変更する場合もありうる。言い訳がましいかもしれないが、授業とは、あくまで「生きもの」だからである。 教材については、とくに指定せず、講師自ら関連資料のコピーを配布する予定である。
01:オリエンテイション ……この授業の目的ともくろみ 02:歴史学の基礎に史料あり ……歴史学はどんな科学か 03:定義を考え直す① ……「倭寇」とは何か 04:定義を考え直す② ……「冊封」とは何か 05:定義を考え直す③ ……まとめと演習:なぜ1455年に偽使は朝鮮に現れたのか 06:「なぜ」から始める① ……中世日朝関係において「偽使」はなぜ通交できたのか 07:「なぜ」から始める② ……雪舟はなぜ中国に行けたのか 08:「なぜ」から始める③ ……まとめと演習:戦国を招いた貿易利権の分散 09:視点を変える① ……日明勘合とはいかなる機能をもっていたか 10:視点を変える② ……冊封儀礼の制度と実態 11:史料の本質をつかむ① ……中世日朝関係における国書改竄事件 12:史料の本質をつかむ② ……雪舟が国宝《破墨山水図》自賛で言いたかったこと 13:視点を変える/史料の本質をつかむ ……まとめと演習:同じ事件を描いた2つの史料を比べる 14:現場の当事者になる/筆記式試験 15:答案返却/総復習 ……狂言に見る中世日本社会
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準備学習(予習・復習)等の内容と分量
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予習については、講義中に指示する文献を読んだり、その都度指示する課題(史料読みなどの宿題)をやってきたりすることが求められる。 なお、高校で世界史や日本史を履修していないものは、高校の世界史/日本史教科書や通史物(各出版社から出ている世界/日本の歴史シリーズなど)などで14〜16世紀の日本と東アジアに関する記述をあらかじめ読みこんでおくことが望ましい。 復習については、授業時に紹介した文献類や、自分自身で探索した論稿・著作・史料等を読み、思考を深めることが必須となる。 なお、予復習の目安は、それぞれ120分ずつ。
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成績評価の基準と方法
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基本的に、単元ごとに課すミニッツペーパー提出(4回程度)の出来映え、および期末の筆記式テストの結果で成績を評価する。 なお、授業時における発言・質疑等も評価の対象に加えたいと思っているので、積極的な質疑・発言等を期待したい。 なおなお、出席点などというものは存在しない点、あらかじめ諒とされたい。
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有する実務経験と授業への活用
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博物館や文化財行政に関わった見地から、多様な歴史資料に対する取り組み方(姿勢)に関する講義も行なう。
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他学部履修の条件
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テキスト・教科書
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講義指定図書
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日本語作文術:伝わる文章を書くために(中公新書) / 野内良三 : 中央公論新社, 2010, ISBN:9784121020567 レポートの組み立て方(ちくま学芸文庫) / 木下是雄 : 筑摩書房, 1994, ISBN:4480081216 考える・まとめる・表現する:アメリカ式「主張の技術」 / 大庭コテイさち子 : NTT出版, 2010, ISBN:9784757122314 中華幻想:唐物と外交の室町時代史 / 橋本 雄 : 勉誠出版, 2011, ISBN:9784585220138 東アジアのなかの日本文化 / 村井章介 : 北海道大学出版会, 2021, ISBN:9784832934108 上から3つの書物(大庭コテイさち子『考える・まとめる・表現する』)は、今後の大学生活や社会活動に必要不可欠と思われるもので、適宜購入して熟読玩味されたい。一生物のスキルが身につくだろう。
上から4つめの文献(拙著『中華幻想』)は、本講義とも密接に関わる講師の単著。学際研究とはいかなるものかを多少は感じ取ってもらえるのではないか。購入せずとも、手に取って目を通してみてほしい。難しいかもしれないが、第3章「皇帝へのあこがれ」などがオススメ。
また、最後の書籍(村井章介『東アジアのなかの日本文化』)も、広い意味での文化や技術の交流史を扱ったもので、エスノセントリズムになずみがちな我々の世界観をほぐしてくれる快著だ。
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参照ホームページ
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研究室のホームページ
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http://www.let.hokudai.ac.jp/history-area/japanese/staff-list-040.php
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備考
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コロナ・ウィルス蔓延の状況によっては、Onlineで実施します。会議室のアドレス等は、その都度、Moodleの授業ページに掲載することにします。
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更新日時
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授業実施方式
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